メッセージ
抜粋
松尾潔
(音楽プロデューサー/作家)
平井堅のブレイクの仕掛け人、CHEMISTRYの生みの親
ひとりの詩人が、先達にして盟友の一周忌にNYに赴き悼む。作りはシンプルだ。だが、この映画はたまらなく胸を打つ。なぜか。詩人とは吉増剛造であり、盟友とはジョナス・メカスだからである。
藤沢周
(作家)
98年「ブエノスアイレス午前零時」で第119回芥川賞受賞誰もが見たことがあるのに、見たこともない世界を発見する詩人と映像作家は、まるで愛し合う者たちのようだ。その特権である眼差しと指先が、また世界を新しくする。
芝山幹郎
(評論家/翻訳家)
映画評論界の第一人者吉増剛造は幻視家にして幻聴者だ。病んでいるのではない。妄想が人一倍激しいのでもない。人に見えない物質を見て、人に聞こえない声や音を聞き取る。そのアンテナが桁外れに鋭い。
森村泰昌
(美術家)
現代美術界のトップランナー此岸と彼岸のはざまでなされる両者間の交信は、やがてゴーゾーさんを深刻な眩暈に巻き込んでいく。そうこうしているうちに私自身にも眩暈が感染する。
今福龍太
(文化人類学者)
サンパウロ大学など各国で客員教授を歴任、奄美自由大学を創設し主宰、東京外国語大学名誉教授メカスはたえず何かを懐かしんでいる。あるいは何かがいま叶えられないことを哀しんでいる。そこに何かがないこと、そこに会いたい人がいないこと、そこが居たい場所ではないこと。
羽生善治
(棋士)
単行本「盤上の海、詩の宇宙」で吉増剛造と対談ジョナス・メカスと吉増剛造。時間と空間を超えて交差する瞬間に何が生まれるか想像がつかない創造を期待せざるをえない。今までに見たこともない色彩鮮やかなタペストリーが生まれるのではないか。
城戸朱理
(詩人)
現代詩のトップランナー/2022年英訳詩集が米ワシントン・ポスト紙の「今年の詩集ベスト5」に選出吉増剛造は死者の声に耳を澄まし、詩を紡いでゆく。その恐るべき瞬間を、カール・テオドア・ドライヤーの『奇跡』のように『眩暈 VERTIGO』は映し出す。
アルバート・ニグリン
/アメリカ
ニュージャージー国際映画祭審査委員長/ラトガース大学教授メカスを知っている私としては、この映画は懐かしい記憶をくすぐり感動的なものだった。偉大な実験映画への巡礼だ。メカスはそうした挑戦的な前衛映画のゴッドファーザーでもあり、この映画はその魅力を詩的に解明し、かつそこに共に存在するという金字塔を打ち立て、時代に残る映像詩となった。敬意を込めて。
古川日出男
(作家)
『LOVE』(2005)三島由紀夫賞、『女たち三百人の裏切りの書』(2015)野間文芸新人賞/読売文学賞受賞亀裂オリエンテッドな二人が、いっぽうの死を越えて何を交感・交流するのか? ただただ大切なドキュメンタリーが起ちあがろうとしている。
ミシェル・アーサー
/イタリア
フェリーニ記念映画祭審査員・脚本家私が最初の映画を撮るためにニューヨークに行ったとき、ブルックリンでジョナス・メカスが住んでいた場所を知りたいと思い散策をしました。それがデジャブとなって圧倒的に、しかも静かに眼前に広がったんです。
佐藤文香
(俳人)
早稲田大学在学中、第2回芝不器男俳句新人賞対馬康子審査員奨励賞を受賞、ほか受賞多数「メカスさん」という呼びかけを聞き続けると、自分がメカスになったように感じた。おのずと、自分にも次の作品が描ける気がしてくる。文字にしたい。声にしたい。
井戸沼紀美
(CINRA.NET編集部)
上映イベント『肌蹴る光線 ーあたらしい映画ー』主催メカスさんにお会いして痛いほど感じたのは、何もごまかしがきかないということ。ハリボテのような言葉はすぐに流され、奥底の、まだ形を持たないような感情だけが見透かされている感覚だ。真っ直ぐに目を見つめられ、涙がぼろぼろ溢れ出た事があった。その眼差し、声の震え方、手の皺。
佐々木美佳
(映像作家・文筆家)
映画『タゴール・ソングス』(2020)監督メカスが残した息子のセバスチャンが生きた人間として我々の前にあらわれる時、二人の面影が交差する。ジョナス・メカスが蘇ったような不思議な錯覚を覚え、胸が熱くなる。
小口詩子
(映像作家)
武蔵野美術大学映像学科教授井上監督の前作『幻を見る人』は驚異だった。時代を生きた故の表現者たちの魂、化石や樹木、水の命声と共鳴する詩人の身体を通し、奇跡の光景を幻視した。次は、レンズ越しの異境に故郷の幻を見続けたメカスさんと生者の交信に耳を澄ますの。
岡 英里奈
(作家/編集者)
『三田文学』編集者〈私が死んだあと〉の声を浮かび上がらせる二人が、どう響き合うか。あたらしい世界の層がひらかれることを楽しみにしている。